字下げ]
空き椅子に腰を下ろす。
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張首明 どうぞ――。(奥へどなる)金公! 何してやがるんだろうな。お客さまだぞ。
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金学甫が裏から廻って出て来る。安重根は続けている。
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安重根 (なかばスパイに)たいした用じゃあないよ。ただ李って人はよく知らないでね、一つ僕を君の友達ということにして、紹介する意味で言っておいてもらいたいんだが――。
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スパイは金学甫と談笑しながら、安重根の言葉に聞耳を立てている。
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同じくウラジオストック。鶏林理髪店付近の場末の民家屋根裏、朝鮮字新聞「大東共報」社。編輯局兼印刷工場。同時に主筆李剛夫妻の住居でもある、大東共報社のみすぼらしい全部だ。
片隅に壊れかかった寝台。傍らの壁には衣類など雑然とかかり、床は、食器炊事道具など散乱し、おびただしい洋書、新聞紙の類が山積している。反対側にささやかな植字台、旧式の手刷りの印刷機、そ
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