も判事も、その動機を説明することが非常に困難だったに違いない。彼等は法律家であり司直の職に在るが故に、此の場合、殺人の動機を求めて而して説明しなければならない。

      ×  ×  ×  ×

 医者でもなく、又法律家でもない人々は、必ずしも此の鑑定を絶対に信頼する必要もなく、又動機を確実に証明する必要もない。
 要之助は全く睡眠中に藤次郎を殺したのだろうか。
 彼に、殺人の動機は認められないだろうか。例えば、仮りに要之助が……いや、之以上は読者の自由な想像に任せておく方が正しいかも知れない。
[#地付きで](〈新青年〉昭和四年十月号発表)



底本:「日本探偵小説全集5 浜尾四郎集」創元推理文庫、東京創元社
   1985(昭和60)年3月29日初版
   1997(平成9)年7月11日5刷
※本作品中には、身体的・精神的資質、職業、地域、階層、民族などに関する不適切な表現が見られます。しかし、作品の時代背景と価値、加えて、作者の抱えた限界を読者自身が認識することの意義を考慮し、底本のままとしました。(青空文庫)
入力:大野晋
校正:はやしだかずこ
2001年2月26日公開
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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