れわれは、いつの間にか、この物語の冒頭に記したある喫茶店の前に来てしまつた。
「ちよつとお茶をのもうか」
 私はまだききたい所もあつたし、それにたつた今さんざん紅茶をのんで来ていても、藤枝がこうした場合必ずつき合う男である事を知つているので彼をさそつて見た。果して彼はすぐに私の申し出に応じた。
 四月十七日に腰かけたと同じボックスがあいていたのでわれわれはまた差し向いになつた。
「いや、君の説明でやつとこんどの事件がわかつたよ。まだしかし一つ判らんことがある」
「何だい」
「第一回の事件直後の家族の申し立てさ。例の夫婦の寝室の鍵ね、妻の室の方からしめてあつたというがありや本当かね」
「ふん、判らないね。しかし徳子がかけておいたと思つてもよくはないかな。駿三は自分の死は仕方がない、と思つていたかも知れない。しかし家族を防ぎたかつたのだよ。だから万一、自分の室に敵がとび込んで来てもすぐに妻の室に行かれぬように徳子に注意しておいたとも考えられる。あるいはあの夜、大いに激論して妻が憤慨の意をあそこにもらしたのかも知れない。夫をシャットアウトしたんだな。しかしこの戸の事は、今となつてはさだ子の生
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