があつたら、手早く劇薬とすりかえようという魂胆さ」
「しかしあの時、駿三は、徳子の薬を、さだ子がすすめた事を知つていたかね。彼は全く知らなかつた、と供述したようだが」
検事が云つた。
「うん、そうかも知れない。ただ林田が、ことによるとそういうことになる、西郷に薬をとりに行くことになりやしないか、と感じたんだ。無論さだ子がすすめたことは知らなかつたろうね。云うまでもないことだが、彼は何もあの日殺人を行う必要はなかつたんだ。ただチャンスさえあればいつでもやろうと考えていたのさ。駿三の物語がことによるといいチャンスが来るぞ[#「ことによるといいチャンスが来るぞ」に傍点]と思わしたにちがいない」
「それで駿三が帰るとすぐ出かけたわけかね」
警部が口を入れた。
「いや、出かける前に面白いことをやつている。すなわちひろ子をおどかしたのだ。ひろ子は一体どこへ行つたか、これが知りたかつたのさ」
私はこの時、あの日ひろ子の所へ来た脅迫状とあの電話を思い出した。
「では彼は如何にしてひろ子が僕のオフィスに来たということをつきとめたか」
藤枝はおもむろに云つて、煙草の灰を落した。
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