ない。無論『僕も秋川一家を恨んでいる人だ』位のことは云つている。こうやつて、あのヒステリーの女をけしかけたのだ」
2
「ちよつと待つて。成程、そうすると秋川駿三は世界中で一番危険な人物を、よりによつて頼りにしたわけになるのだね。それにしても、昨年の十月に林田が里村千代に通信した、ということがどうして君に判るのだい」
今までだまつて聞いていた検事が突然口を出した。
「それは例の、さだ子宛の脅迫状さ(ひろ子の話第三回参照)長女ひろ子に来ずに、次女のさだ子――このさだ子は後にもいうがおそらく駿三がよその女との間に作つたというちよつといわれのあるさだ子に、十月に脅迫状が来ている。これは決して偶然ではない。またもし里村千代ならこんなまねはしない。あの女の自発的な考えなら、三人の娘に一度によこす筈だ。何故里村千代が特に腹のちがう次女に脅迫状を送つたろう。云うまでもなくこれは林田の智慧なのだ。つまり林田が里村千代に特に次女にあててのみ脅迫状を送れ、と命じたのさ。ここに林田の殺人シンフォニーのまず第一絃が弾ぜられている。特に次女に来た[#「特に次女に来た」に傍点]ということで、僕らは
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