。その他に色々な化粧品がおかれてあつたが、そんなものは今|記《しる》している限りではない。注意すべきはただ一つ壁のところにさつきまで初江が着ていた着物がかかつている、着物の主は今正しく浴場にいるにちがいないのだ。
 林田もすぐ着物に目をつけたものと見え、ちよつと躊躇して私をかえりみた。
 初江がどんな状態で浴場にいるにせよ、彼女は無論裸体になつているにきまつている、如何なる場合も若いお嬢さんが真裸体《まつぱだか》でいる所に男がとびこむ事が許されるべきであろうか。
 しかしひろ子の悲鳴はわれわれに一瞬間以上の躊躇を許さなかつた。
 林田も私と同じ考えと見え、右手のガラス戸の外から、
「初江さん。初江さん」
 と二、三回よんでガラス戸を叩いたが、中から何の返事もないのをたしかめるや、
「おい、あけて見よう」
 と私に云つたがその声は異常な緊張味をおびていた。
 私は無論賛成した。
 戸をひきあけて、中をのぞいた瞬間、私と林田と顔を見合わせて、思わず、あつと叫んだのである。
 中はタイル張りの美しい広い浴場である。
 その奥に、洋式の立派な浴槽がおいてある。
 初江はどこにいたか? 彼女はた
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