てしきりと話し出したが、殆どそれは大切な事柄ではなかつた。
私はいつも不思議に思うのであるが、よく方々の警察署が功名争いをして、肝心の犯人を取り逃がすなどということがある。彼らが一致さえすれば必ず犯人を捕えただろうというようなことを屡々耳にする。
それと同じことでこの二人の探偵が互に相談し合い、助け合つたならきつと今度の犯人も捕まるだろうに、と思われるのだが、残念にもそんな気もちは藤枝にも林田にもないように見えた。
二人とも表は平和に見えるけれども、きつと心の中ではしのぎを削つているのだろう。二人は腹の探りあいをしている、しかもおたがいに、カマをかけて見たところで相手がうかうかと考えていることをしやべるような人でないことを知つているので、決してそんなまねはしない。ただ態のいい世間話をしているのだが、かたわらから見ていると、何となく重苦しい気もちで決して愉快な対面とは云いかねるのである。
しかしこの空気はたちまちにしてここの主人によつて破られた。
青い顔に、つるし上つたような目つきで、興奮して駿三が飛び込んで来た。
「林田先生、藤枝先生、こんな手紙が今郵便箱から出て来たのです」
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