かつた。
 見たところ立派な紳士である。がそのカイゼル式の髭と鷲鼻を除いては別に何の特色もない。
 私はすぐ藤枝から林田に紹介されてそこに腰かけた。駿三はまもなく部屋から出て行つた。あとにはわれわれ三人だけ。
「けさここの主人から急によばれて、やつとさつき来たんだが、来て見るともう君らが見えているという話さ。大分おくれをとつて残念だが、しかし主人やお嬢さんにあつて、もう大分おくれを取り返したぜ」
「いやこつちの方が大分へまをやつちまつたよ。僕の方の依頼人は主人ではなくお嬢さんなんだが、実は昨日たのまれてたんだ。ところで今日はもうこの騒ぎだ。ちつとへまだつたよ。しかし君の方は主人に頼まれただけに大分有利なわけだね」
「どうして」
「どうしてたつて、主人からきけばこのうちの妙な関係がすぐ判るじやないか」
「ああ、君はもう気がついたかい。実は主人もはつきり云わないんだけれど、この家の中には全く惨劇か何かおこりそうな空気があるよ。僕は今話をきいてそれを感じたんだ」
 此の時、ドアがあいて笹田執事がうやうやしく、盆に何かのせてはいつて来た。
「只今、郵便箱にこの手紙がはいつて居りましたので……」
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