た。
無論私はすぐに彼の家にかけつけた。
「今電話でうかがつたが、どうかしたのかい」
私は彼の部屋に通されると、すぐ、つまらなそうな顔をしてベッドに身を横たえている藤枝に声をかけた。
「うん、大したことはないんだがここをやられちやつてね」
こう云いながら彼は咽喉を指さしたが、成程、声が大変にかすれている。
「つまらん遠慮をしてひどい目にあつた。あのM・C・Cだよ。いつたい僕は君も知つてる通り、エジプト煙草を喫わないんだ。僕はいつも、エーアシップだのヴァージニヤンリーフの煙草ばかり喫つているので急に変つた煙草をやると必ずのどを悪くするんだ。以前にも一度こんな事があつたよ」
「じや、昨日秋川の処でエーアシップを女中にでも買わせればよかつたな」
「そうさ。それは知つていたんだが、暇をとるとかとらないとかいつている女中達に余計な用を云いつけて秋川家の人を困らすのもどうかと思つたので、あのエジプト煙草を、たてつづけに十本喫つちまつたんだ。つまり僕のいじきたな[#「いじきたな」に傍点]からおこつた事だから誰にも文句は云えないが、おかげで今朝からすつかり咽喉を腫らして熱があるんだ。大したことはないが八度ほどある。それで僕は今日出られないんだ」
「そりやひどい目にあつたね。して用事というのは」
「その事さ。僕のかわりに僕が起きられるまで秋川家の人々を――保護、というか、監視というか、ともかく怠けずに注意してもらいたいのだが」
「ふうん。というと、君は将来、まだあの家に何かおこると思つてるんだね」
「それは判らない。しかし起るかも知れない」
「しかし、主人は会わないつていう話だが」
「主人にあう必要はない。けれども、ひろ子とさだ子の二人の行動を出来るだけ注意していてもらいたいんだ」
2
「じや、あの二人を保護するというんだね」
「うん。保護かあるいは監視だ」
「どつちだい」
「判らんね」
「という君は、彼ら二人の中に犯人がいるというのか。もしくは将来犯人たり得る……」
「それもはつきり云えない。ひろ子かさだ子が犯人になるか、被害者になるか、ともかく重大なことがおこるかも知れぬから注意していて貰いたい」
「注意してつて云つても僕には……」
「だから君は、毎日あの家に行つて二人の令嬢のお相手をしていりやいいんだよ。ずい分いい役じやないか」
「それだけならまあ僕でも出
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