たいけれど、大して得る所はなさそうだよ。無論伊達が殺人を自白すれば別だが……ただ本人がアリバイを立証できぬというだけでは意味がないからね。警察側で、彼が殺人をしたという事を立証できなければ仕方がないよ」
2
秋川邸の玄関についてベルを押すと、出て来たのは笹田執事であつた。
「これは藤枝先生ですか。もう少し前に林田先生が見えてお帰りになりましたよ」
「御主人は御病気だそうで。あなたも中々忙しいでしような」
靴をぬぎながら藤枝がこんなことを云つた。
「全く今日は閉口致しました。朝から新聞社の方々が見えて、御主人にお目にかかりたい、御主人が病気なら令嬢にあいたい、と云つて中々帰らんので、私がいちいち応対致しましたようなわけでね」
「ははあ、じや、今日の夕刊には『秋川家の執事笹田仁蔵氏は憂わしげに語つて曰く』……てな記事が出ますぜ。あなたも大いに有名になるわけだな」
「とんでもない。こんな事で有名になんかなりましては」
こんな事を云いながら、笹田執事はわれわれ二人を応接間に通した。
「勿論、御主人にはお目にかかれますまいから、令嬢に御目にかかりたいんです。おや、これじやつまり新聞記者と同じことだな。あなたに撃退されちや困るが」
「御冗談で……」
愛想よく、笹田執事は二人を残して出て行つたが、暫くすると、ひろ子が部屋にはいつて来た。
「先生、あの昨夜犯人が捕まつたそうでございますね」
「ええ、どうして御承知ですか」
「さつき林田先生がおいでになつた時、そんなことを承りました。先生はこれから警察に行くんだとおつしやつてでした」
「私は今牛込警察署でゆうべ捕まつた男というのに会つて来たんですよ」
「まあ! そうして犯人は白状致しまして?」
ひろ子は美しい目を大きく輝かした。
「御当家の庭に外から飛び込んだということはたしかに本人も認めています。何でも佐田やす子の情夫だつたというので、やす子にあいに来たというのです。しかし、駿太郎君を殺したことは勿論、やす子を殺したおぼえもない、とこう云つていますよ」
「で、先生のお考えは?」
ひろ子はさぐるように藤枝を見つめた。
「私の考え? その男、早川辰吉についてですか」
「はい」
「さあ、そりやその男が殺人犯人かも知れないし、そうでないかも知れない、と今の処そういうよりほかはありませんな」
「でも、佐田やす子の情
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