な関係をもつ者の中で、その当時の自己の行動につき立証するのに最も困難だつたのは伊達正男であつた。
彼はちようど私達が秋川家に着くちよつと前に裏口から辞し去つたのである。しかるに暫く経つてから、二階のさだ子の部屋の前にその姿をあらわした。これは本人も認めているらしく林田もさだ子もそう云つている。
ところでそれからの行動は誰にも判らない。本人の云う所に従えば、彼は林田に、直ぐ家に帰るように云われてから従順にその言に従い、再び裏口からぶらぶらと歩きながら自分の家に帰つた。
そうして自分の家で紋付を取つて制服に着かえようとしている所へ、女中が事件を報告に来たというのである。
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(後に当局者の調べた所によると秋川家の裏門から彼の云つた程度のぶらぶら歩きで伊達の家に行くには約十分かかる。だから彼の供述が偽りである、とは云えない。けれども、これは伊達の歩調がぶらぶら歩きである、という仮説のもとにおいてのみ認められることで、この近距離を青年が、ことにラクビーの選手である彼が疾風の如くに走つたならば三分で行き得た筈である。従つて残りの五、六分の間に彼は何をやつたか判らないことになる)
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ことに伊達の為に不利だつたのは平生雇つている婆さんがちようどその時うちにいなかつた事で、彼がまつすぐに平生と少しも変つたことなく帰宅したといふ事実を立証する者が一人もなかつたのである。
伊達に対する警部の訊問はかなり厳しいものだつた。
従来あらゆる悲しみと苦悩とを無言でかみしめて堪えて来たらしい可憐なさだ子がついにたまりかねて、
「皆さんは伊達さんを疑つてらつしやるのでしようか……」
と林田に嘆願するようにたずねた位であつた。
2
ちようどその時さだ子のすぐそばに藤枝がおり次に私がいたのだから藤枝か私にこうきいてもいい筈なんだが、さだ子はわれわれよりも林田の方を信用しているものと見える。
もつとも、藤枝や私は、彼女にはじめから好意をもつていないらしいひろ子に頼まれてここに来ているのだからそれも不思議はないけれど。
林田もさすがにはつきりした事はいいかねて、何やら口の中でしきりに云いながらさだ子を慰撫《いぶ》していた。
警察や本庁の人達の調べは約二時間余にもわたつて漸く一先ず打ち切りと云うことになつた。あとは裁判所から予
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