白い物体の方に飛ぶように走つて行つた。つづいて警部がおくれじと走る。私と駿三とはややおくれてかけつけたが、私ははじめて白い物に近づいて思わず、
「こりやひどい!」
 と叫んだのである。
 さつきまであんなに元気だつた駿太郎がここに、見るも無惨な死体となつているではないか。しかもなみたいていの死にざまではないのだ。
 からだは全くすつぱだかである。
 両足を開いてこちらに向けて仰向きに倒れているのだが、あしの下に着物がくちやくちやに敷かれている。両腕は背にまわされ、多分しめていた兵児帯で後手《うしろで》に緊縛《きんばく》されているのだろう、その端がいんこう部に二まわりばかり堅くくくられている。
 きれいな顔の上半分が血まみれになつているのは傷でも受けたものであろうか。
 更に奇怪なのは、猿股がひきちぎられてすてられ更にうすいメリヤスシャツがむちやくちやにむしつてあつて右に述べた通り、身体が全くむき出しになつていることだ。
 私が叫んだと同時に後で、うんという異様な声がきこえた。ふりかえつて見ると駿三がふらふらと倒れかかつて来る。
「いかん。我が子のこんな有様を見せちや駄目だ。脳貧血だよ。君早くかついで行つて介抱してくれ。それからすぐ警察へ……」
「警察は僕がやる。小川さんはすぐ秋川さんをつれて行つて、それから林田君をよんでくれ給え」
 高橋警部がこう云つて木戸の方へとんで行つた。
 私は駿三を介抱しながらガラス戸の入口に向つた。

      2

 私がガラス戸の入口へ向つて進んで来るとひろ子が下駄をはいてこつちへ来ようとする所だつた。
「ひろ子さん、お父様がちよつと脳貧血を起したんですよ」
「まあ」
 彼女はこう云つてかけよつたが、駿三ももう回復しかけたらしく、多少歩けそうなので私はひろ子に駿三を托した。
 ひろ子は不安なまなざし[#「まなざし」は底本では「まざし」]で
「あの、何か起りましたの、弟がどうか……」
 どうせまもなく判る事だけれど、彼女に今真相をつげる手はないと思つたから私はそれには答えず、
「林田君はどこにいます」
 ときいたがちようど此の時、二階のさだ子の部屋にいる林田が騒ぎに驚いて窓から首を出したものと見え、
「おおい、林田君、すぐここへ来いよ」
「何だ。よし、すぐ行くよ」
 という、一方は庭から、一方は二階からの藤枝と林田の問答がきこえたので
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