く来てくれた
     砂山越えて

 裾で小砂を
     曳きながら

めかり娘
「待つと言はれりや
     裾曳きながら

 来たにや来たもの
     磯蔭じや。

すなどり男
「よく言ふてくれた
     小磯の蔭じや

 磯や小磯や
     磯蔭じや。


[#1字下げ]棉打唄[#「棉打唄」は大見出し]

丘の榎木《えのき》に
蔓葛《かつら》が萠える
鷽《うそ》が鳴くわい
酒屋の背戸《せど》で。
  びんびん棉打て
  畑の茨に
  とろとろ日が照る

裏戸覗くは
みそもじさまか
そなた思へば
五分《ごぶ》、棉打てぬ
  びんびん棉打て
  畑の茨に
  とろとろ日が照る。

浜の小砂利の
数ほど打てど
そもじ見たさに
竹で目を衝いた
  びんびん棉打て
  畑の茨に
  とろとろ日が照る


[#1字下げ]山越唄[#「山越唄」は大見出し]

おらも十六
     七八は
同じ問屋の
     駅路に
なんぼ恥かし
     のう殿ご
花のやうだと
     褒られた
殿の姿は
     駅路の
そんじさごろも
     花だわい
ちらりちらりも
     めづらしき

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