れたか
あの姉《あね》さまは

たぼが二尺も
垂れこけた

馬にや蹴られぬ
姉さまたぼは

牛にふまれて
垂れこけた

どこで踏まれた
あの姉さまは

裏の畑の
真ン中で


[#1字下げ]日ぐれの花[#「日ぐれの花」は大見出し]

くちなしの花の
白さよ

くちなしの花が咲いた
白い花

くちなしの花は
白い花

つゆくさの花の
青さよ

つゆくさの花が咲いた
青い花

つゆくさの花は
青い花


[#1字下げ]春告鳥[#「春告鳥」は大見出し]

梅の小枝に
春告鳥《はるつげどり》は

ホケキヨ ホケキヨと
来てとまる

ホケキヨ ホケキヨと
春告鳥が

梅の小枝で
言ふことは

風が寒くて
梅の木さへも

花が咲いたり
咲かんだり


[#1字下げ]千羽鶴[#「千羽鶴」は大見出し]

千羽鶴さへ
一羽でもかけりや

九百九十九羽
はぐれ鶴

お月さまでも
片隅かけりや

かけた片隅ヤ
真の闇

はぐれ鶴になりや
啼き啼きさわぐ

かけりやお月さんも
痩せ細る


[#1字下げ]枝垂柳[#「枝垂柳」は大見出し]

枝垂柳《しだれやなぎ》は
お化けに化けな

化けてお化けに
なつちまへな

枝垂柳に
お月さんが出たよ

細い真白い
お月さんが

細いお月さんは
三日月さんよ

出てもさつさと
ひつこんちまふ


[#1字下げ]月の提灯[#「月の提灯」は大見出し]

お空がくらいよ
月さんよ

お空に提灯
つけなさい

三日月さんさへ
山の端に

暗けりや困ろと
出てつける

お空がくらいよ
月さんよ

今夜は提灯
つけなさい


[#1字下げ]極楽とんぼ[#「極楽とんぼ」は大見出し]

わが家わすれて
極楽とんぼア

あの町この町と
飛びあるく

あの町この町と
極楽とんぼア

用もないのに
飛びあるく


[#1字下げ]鏡[#「鏡」は大見出し]

鏡見てたら
お母さんよ
おでこがうつる

おでこかくれる
お母さんよ
髪おくれ


[#1字下げ]砧[#「砧」は大見出し]

今夜来るかと
墻根《かきね》の外を

思て打つよだ
砧《きぬた》の音が

暗い墻根の
あの外を


[#1字下げ]田に居る鳥[#「田に居る鳥」は大見出し]

田にゐる鳥は
脚の長い鳥だ

脚の長い鳥は
なんと言ふ鳥だ

鷺《さぎ》の鳥ならば
脚の長い筈だ

鴫《しぎ》の鳥ならば
脚の長い筈だ。


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