河原の
河原|鶸《ひわ》
河原さ 呉服屋
出すだとサ
でんでん虫
今日は 引越しだ
でんでん虫の
引越しだ
ポロポロ雨の 降つてるに
家を負《しよ》つて
引越しだ
どこへ 引越しだ
茶の樹の葉つぱへ
引越しだ
のーろり のろり のろり
家を負つて
引越しだ
おしやれ椿
藪の 中に
咲いてる
藪椿
赤いべに さした
あの花
おしやれ
うしろ向いて
咲いてる
藪椿
赤いべに 貰ほ
あの花
おしやれ
子守唄
父さんなくとも
子はそだつ
母さんなくとも
子はそだつ
雀と遊んで
ゐるうちに
七《ななつ》のお歳の
日は暮れる
父さんなくとも
日は暮れる
なんなん七の
日は暮れる
母さんなくとも
日は暮れる
なんなん七の
日は暮れる
夢を見る人形
赤い靴 ほしがる
お人形さんは
赤い靴 はいてる
夢をみる
赤い靴 ほしがる
お人形さんは
夢で 赤い靴
はいてゐる
赤い帯 ほしがる
お人形さんは
赤い帯 しめてる
夢をみる
赤い帯 ほしがる
お人形さんは
夢で 赤い帯
しめてゐる
帰る燕
燕の 子供が
帰つてゆく
お母《つか》さんに 連《つれ》られて
帰つてゆく
オペラパツク おみやげに
やりませう
来年 お母さんと
またおいで
お母さんと ふたりで
またおいで
一つお星さん
一つ お星さん
海の上
一つ お星さん
屋根の上
千鳥は 渚で
日がくれる
馬は、厩《うまや》で
日がくれる
一つ お星さん
海の上
一つ 一軒家の
星根の上
お人形さんの夢
お人形さんの
昔のお家《うち》は
ガラスのお窓
鳳仙花が
一杯 お庭に
咲いてゐた
お人形さんは
今でも 鳳仙花の
夢を見る
お人形さんは
ガラスのお窓の
夢を見る
昼の月
白いお月さん
昼の月
お月さん子供の
夢みてる
片われお月さん
昼の月
かはい子供の
夢みてる
さらさら時雨
畑の 中の
さらさら
時雨《しぐれ》
さら さら さツと
鶏《とり》が 頸
曲げた
厩《うまや》の 屋根の
さらさら
時雨
さら さら さツと
馬の 耳
濡れた
名所めぐり
柱くぐり
奈良の大仏さんの
うしろの柱
柱よー
二人子供が
柱くぐりしてる
くぐれよー
奈良は日永《ひなが》だ
いつ日が暮れる
子供よー
おれも くぐろか
子供と共に
くぐろよー
弁慶の鐘
むかし
むかしの
ことだちけ
鐘から
鏡が
出ただちけ
むかし
むかしの
ことだちけ
弁慶さんが
かづいた
鐘だちけ
貝遊び
一つ 貝殻
拾ひませう
二つ 貝殻
拾ひませう
お歳の 数ほど
拾ひませう
一つ 貝殻
数へませう
二つ 貝殻
数へませう
お歳の数ほど
数へませう
和歌の浦
船は帆かけて
四国へ
渡る
沙を踏み踏み
啼いた啼いた
千鳥
波はざんぶと
渚に
寄せる
かけて歩いて
啼いた啼いた
千鳥
霜柱
ザツク ザツク
踏んだ
踏んだ
霜柱
雀に
踏ませて
遊ばせよう
踏んだ 踏んだ
ザツク
ザツク
霜柱
雀も
踏み踏み
遊んでる
お乳飴
お乳 お乳と
泣く児のお母《つか》さん
鵜戸《うど》の窟《いはや》の
お乳飴なめた
トドロ ドンドン
サーラ サラ
鵜戸のお乳飴
お母さんがなめた
乳なしお母さんの
乳が出た
トドロ ドンドン
サーラ サラ
観音のおびんづる
観音さんの おびんづるは
鼻を撫でられる
撫でやれ 撫でられ
鼻ぴく おびんづるになつちやつた
観音さんの おびんづるは
顋《あご》を撫でられる
撫でられ 撫でられ
顋なし おびんづるになつちやつた
観音さんの おびんづるは
顋なし鼻ぴく おびんづる
姨捨山
姨捨山《をばすてやま》に
捨てられた
姨は帰つて来なかつた
山から
山へ
山彦は
谷から
谷へ
山彦は
山|時鳥《ほととぎす》は
帰つても
姨は帰つて来なかつた
阿弥陀池
大阪堀江の
お寺の池は
どぶどぶ泥池だ
百済《くだら》から来た
お阿弥陀《あみだ》さまは
どぶんと捨てられた
今は 信濃の
善光寺さまの
お阿弥陀さまだ
むかし 堀江の
どぶどぶ池に
どぶんと捨てられた
長柄の橋
ここは大阪の どこの町
ここは長柄《ながら》の 町つづき
長柄の橋は 人柱
雉子雑子 啼くな 雉子啼くな
雉子も啼かずば 打たれまい
この児も泣かずば 遣《やら》れまい
おー おー 恐い おー恐い
雑子雉子 啼くな 雉子啼くな
田甫の狐
重い車
牛の顔を 見てゐたれば
涙がこぼれた
重い車を 曳かせられて
泣いてゐるんだよ
可哀想で 可哀想で
し
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