せ》の茶やら

ハラリハラリと
  まだ日は高い


[#1字下げ]焦土の帝都[#「焦土の帝都」は大見出し]
[#ここから4字下げ]
大正十二年九月一日、大震災につぎて大火災おこり帝都の大半焦土となる。
[#ここで字下げ終わり]

[#2字下げ]一[#「一」は中見出し]

焼野原見りや
涙が落ちる 落ちるよ

  火攻め 火の海
  火の地獄 地獄よ

[#2字下げ]二[#「二」は中見出し]

ただの一夜《いちや》で焼野の原と
なろと思ほか 思はりよか

  なろと思ほか
  火の地獄 地獄よ

[#2字下げ]三[#「三」は中見出し]

焼野原なら
雉子《きぎす》も啼こに 啼こによ

  泣くは火攻めの
  人の群れ 人の群れ

[#2字下げ]四[#「四」は中見出し]

親は子を呼び
子は親呼んで 呼んでよ

  声は渦巻く
  焔は狂ふ 狂ふよ

[#2字下げ]五[#「五」は中見出し]

これが都の
昨日《きのふ》のすがた すがたよ

  生きて火攻めは
  この世の地獄 地獄よ



底本:「定本 野口雨情 第一巻」未来社
   1985(昭和60)年11月20日第1版第1刷発行

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