の國に入られる前に此の地方で非常に盛であつた氏でありますから、其の氏の確かな研究が少し出來かゝつて來たら、其の氏といふものゝ當時のことが餘程分ると思ふ。それから又皇太神宮との關係ももう少しはつきりしたならば、此の土地へ神武天皇が入つて來られてから今の皇室が大きく發展して、そして此の地方を完全に統御するまでの其の來歴が各神社の状態に依つて分るのであらうと思ひます。それで大に研究すべきものだと思ひますが、私は無論それ等の材料を有ちませぬし、是から國史をやつて材料を集めて研究しようといふ程の考もありませぬ。唯之を研究しないといふと近頃のやうに唯神樣を拜めといふことを無暗に言つても實際此の土地が皇太神宮の威徳に服するまでの由來が分らないと思ふ。さういふことを少し國學をやる人、神職などの人が研究して見たら宜からうと思ふので、此の問題を茲に提供したのであります。是は私は必ずしも今日結論を有つて居りませぬから、たゞ問題を提供するまでに止めます。斯ういふやうな色々な疑問は神祇志、又は神祇志料、其他の本を讀んだりなんぞした時に、まだ/\澤山有つたことがありますので、其の中に近畿に關係あるものゝ又一部分を茲に御話して見たゞけのことであります。
[#地から1字上げ](大正八年八月史學地理學同攻會講演)



底本:「内藤湖南全集 第九卷」筑摩書房
   1969(昭和44)年4月10日発行
   1976(昭和51)年10月10日第3刷
底本の親本:「増訂日本文化史研究」弘文堂
   1930(昭和5)年11月発行
初出:史学地理学同攻会講演
   1919(大正8)年8月
入力:はまなかひとし
校正:菅野朋子
2001年9月26日公開
2006年1月14日修正
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