武州喜多院
中里介山
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)目醒《めざ》ましい
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)風※[#「蚌のつくり」、第3水準1−14−6]
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これも五月のはじめ、郊外の新緑にひたろうと、ブラリ寓を出でて、西武線の下井草までバス、あれから今日の半日を伸せるだけのして見ようと駅で掲示を見る、この線の終点は川越駅になっている、発駅は高田馬場である、そこで六十何銭かを投じて川越駅までの切符を求めた。
特に川越を目的とする何等の理由は無かった、全く出来心ではあったし、川越という処も一両度訪れたことはあるのだがどうも、東京もよりでは、すでに歩くだけは歩きつくしているような我身だから、時にはおさらいをして見るより外はないという事情もある。
川越といえば、今ではお薯の名所となっているが、近世史上から云えば、なかなか由緒のある土地である、武蔵国では江戸を除いては一二と云う都会であったのだ、小田原北条以来勇武の歴史もあるし、徳川になっても有力
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