買ッテ食ワセタユエ、殿様殿様ト云イオッテ、外ノ者ガカッテ物ヲ持ッテ来ルト、前金ニ内通シテクレル故、イチモ損ヲシナカッタカラ、伏ノ市ニハ切者《きれもの》ノモノニ、オレガカサヲアケサセタカラ見損ジテ、三匁ノ物ヲオレガ一分入レルト、カセアケガ段々見テ、勝様ハ三匁五分ト云ウカラ、五分ノ損ダカラヨカッタ、ソノ替リニハ、イツモ仕舞イニハソバヲタトエ五十人来テモ一パイズツニテモ、是非クワセルヨウニシテ帰シタカラ、町人ハ壱文弐文ヲアラソウ故、皆ンナガ悦ンデ、諸所ノ市場ニハ、オレガ乗ル蒲団ヲ一ツズツ拵エテアッタ、友達ガクヤシガッテ、イツモオマエハ、市デハ商人ガハイハイ云ウ、ドウイウ訳ダト云ウカラ、右ノ次第ヲ咄《はな》シタラ、ソレデハ損ダト皆々云ッタガ、タイソウ得ニナッタ、ソレカラ借金ガ四十俵ノ高デ三百五十両半アルカラ、女郎ヲ買ッタト思ッテ、金ノハイル度々《たびたび》、段々トウチコンダカラ、二年半バカリニ三四十両ニナッタ、コワイモノダ」
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やりくりというものは、窮するが如くして迫らざるところのあるものだ。この窮通ができたのは、妙見様の御利益《ごりやく》ばかりではない、小まめに立働くところが感心だ。おれにはできない――こういう神妙な立ちまわりはおれにはできないと、神尾が兜《かぶと》を脱ぎながら、
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「何デモ施シガ第一ト心得テ近所ハ勿論《もちろん》、困ルト云ウモノニハ、ソレゾレソノ者ガ身ニ応ジテ施シタガ、ソノセイカ、饑饉ノ年ニハ、毎日毎日日々壱朱ズツ小遣《こづかい》ニシテ遊ンダ、友達ヘモ時ノ会ヲ合ワシテヤルシ、毎晩毎晩、道具ノ市ヘ行ッテ勤メダト思ッテ精ヲ出シタ、売物ノブ市トイウ物ヲ百文ニツイテ四文ズツノケテミタガ、三月ノ中ニ三両弐分ト葉銭ガタマッタカラ、刀ヲコシラエタ」
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この辺になると、二宮金次郎はだしだ。感心感心と神尾があしらい――さて、その次には本職の方になってくる。
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「剣術ノ仲間デハ、諸先生ヲノケテ、イツモオレガ皆ノ上座ヲシタガ、藤川近義先生ノ年廻リニハ出席ガ五百八十半人有ッタガ、ソノ時ハオレガ一本勝負源平ノ行司ヲシタ、赤石孚祐先生ノ年忘レハ岡野デシタガ、行司取締ハオレダ、井上ノ先伝兵衛先生ノ年忘レニモ頼ミデ諸勝負ノ見分《けんぶん》ハオレガシタ、男谷《おたに》ノ稽古場開キニモオレガ取締
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