云ウニハ、何モ持ッテキテガナイカラ、何ニモイラヌト云ウカラ、権之助ヘオレガ掛合ッテ百両ノ持参デ、諸道具モ高相応ニシテ貰ッタカラ、知行所ノ百姓モキモヲツブシテ、私共二三年諸方ヘ頼ンデ奥様ノコトヲ骨ヲ折ッタガ、岡野ト聞クト皆々破談ニナリマシタガ、御蔭デ殿様初メ一同安心シテ悦ビマス、殊ニハ御持参金モアルシ有難イト云イオッタ、ソレ迄ハ千五百石デ道具ガ一ツ無クッテ、大小マデモ逢対《あいたい》ノ時ニ借リテ出ル位ダカラ、世間デ呉レナイモ尤《もっと》モダト思ッタ、ソレカラ普請ガ大破故、武州相州ノ百姓ヲ呼ビ出シテ、家作モ直シ、大勢ノ厄介ノ身上マデ拵エテヤッタ、当主ノ伯父ノ坊主デイタ仙之助ト云ウ男ニモ、地面内ヘ家作ヲシテ、妾《めかけ》マデ持タシテヤッタラ、家内ノ者ガオレヲ神様ノヨウニ云イオッタ、暮シ方モ百両故、三百三十両ノ暮シニシテ、厄介ヘモソレゾレ壱カ年アテガイヲ附ケテ稽古事デモ出来ル様ニシテ、馬迄買ワシ、千五百石ノ高位ニハ少シ過ギル位ニシテヤッタガ、何ヲイウニモ借金ガ五千両バカリアル故、コラエガ馬鹿ノ者ニハ出来ヌ」
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 これはまた、神尾にとって少々耳――ではない、目が痛い。千五百石となると、もう小身の部ではない、おれの分限にも近くなってくるし、当主という奴の身持が、おれの伝だ。他人のことにして見ると、歯痒《はがゆ》いばかりの馬鹿揃いだが、自分のことには、さっぱりお気がつかない――結局、この神尾主膳にも、誰も嫁のくれ手がなくておしまいだ。嫁さがしで江戸を構われただけではない、甲州まで行って、有野の娘でもしくじったわい。でも、この岡野とやらには、勝のおやじのような出しゃばり屋の千三式の肝煎《きもいり》が出来て、ひとまず成功したが、おれの方にはソンナのが現われなかった――

         六十七

 こうして顔を広くし、人の面倒を見てやっては男を売るというような立場になると、どのみち、行詰まるのは運動費だ。本来、金のなる木を持っているわけではなし、千三屋というものは、千に三つしか当らないわけのものだろう。当った時の儲《もう》けは、外《はず》れた数の損耗で、とうにさっぴきがついている。勝のおやじ、この経済の打開をどうするか。そこは神尾が今日までの体験の持越しで、今以てうだつが上らないのみか、ますます深みへ落ちて行く勘所《かんどころ》だ。それを、このおやじが最後ま
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