ござんす、では、わたしがそのお節介役《せっかいやく》を引受けたとしましょう、お前さんだけを死なして、あの女子《おなご》を引戻したのがわたしだとしたら、お前さんはどうします」
「恨みます、七生までも」
「恨んで、どうなさいます」
「あなたの身の上にとりついて、一生のうちに必ず、あなたを亡ぼしてお目にかけます」
「おやおや、たいへんな執念ですね、一生のうちに、わたしを亡ぼすとおっしゃるが、一生の後に亡びない生命がどこにありますか」
「いいえ、亡ぼすにもただは亡ぼしませぬ、こうだと思い知らせて上げるだけの亡ぼし方で、亡ぼします」
「なお大変なことになりましたねえ、長い目で見ておりましょう」
「見ておいでなさい、そうら、竜神の森が焼けました、あそこに斬られているのは、ありゃ誰だと思召《おぼしめ》しますか」
「そんなことを、わたしが知るものですか」
「金蔵なんです、金蔵の奴、わたしの恨みで死にました」
「ははあ、では、少し見当違いになりましたね、最初のもくろみでは、わたしの身の上にとりついてやるとおっしゃったようですが、いつのまにか金蔵さんとやらの方へ振替わりましたね、お門違いじゃないかね」

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