しょう》についたな」

         五十九

 さてこれからが、勝小吉再度の駈落物語となる。
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「その日は、むこくに歩いて、藤沢へ泊って、朝七ツ前に立って、小田原へ行って、先年世話になっていたうちの喜平次を尋ねて行ったが、喜平次も、乞食がさむらいに化けて来たものだから初めは不審した。喜平次のうちを出た亀と言ったら、ようやく思い出して、いろいろ酒など振舞ったが三百文盗んだことを言い出して、金を二分二朱やったほかに酒代《さかて》を二朱出して、以前、船へ一しょに乗った野郎共を呼んで酒を呑まして、今は剣術遣いになったことをはなして笑ったら、みんなが肝をつぶしていた。今晩はぜひとも泊れと言ったが、江戸より追手が来るだろうと思ったから、早々別れてそこを立って箱根へかかった。
喜平次とほか三人ばかり三枚橋まで送って来たが、そこよりかえして、ようよう関所へかかったが、手形がないから、関所の縁側へ行って、剣術修行に出でし由申して、お関所を通して下さいと言ったら、手形を見せろというから、そこでおれが言うには、御覧の通り江戸を歩行通りのなりゆえ、手形は心づかず、稽古先より計らず思
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