》一枚、帯は縄を締め、草鞋《わらじ》をいつにも穿《は》いたこともねえから、ざまの悪い乞食さ。
府中の宿《しゅく》のまん中ころに、観音かなにかの堂があったが、毎晩、夜はその堂の縁の下へ寝た。或る日、府中の城の脇の、御紋附を門の扉につけた寺があるが、その寺の門の脇は、竹藪《たけやぶ》ばかりのところだが、その脇に馬場の入口に、石がたんと積んであるからそこへ一夜寝たが、翌日朝早く、侍が十四五人来て、借馬のけいこをしていたが、どいつもどいつも下手だが、夢中になって乗っておるから、おれが目を覚して起き上ったら、馬引どもが見おって、ここに乞食が寝ておった、ふてえ奴だ、なぜ囲いの内へへえりおったとてさんざん叱りおったが、いろいろわび言してその内へかがんでいて馬乗りを見たが、あんまり下手が多いから笑ったら、馬喰《ばくろう》どもが三四人で、したたか[#「したたか」に傍点]おれをブチのめして、外へ引きずり出しおった。おれが言うには、みんな下手だから下手だと言ったが悪いか、と大声でどなったらば、四十ばかりの侍が出おって、これ乞食、手前はドコの奴だ、こぞうのくせに、侍の馬乗りをさっきからいろいろと言う、国はドコ
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