ふだん遊びに行く故に、いちいち世話をしてくれたが、うちへ帰るきがいがある故、頼んで送ってもらった。大きな目に逢った。その後は二月ばかり亀沢町は通らなんだが、同町の縫箔屋《ぬいはくや》の長というやつが、門の前を通りおったから、なまくら脇差にて叩きちらしてやったが、うちの中間《ちゅうげん》がようようとめて、長のうちへ連れて行って、はんの木馬場の仕返しの由をその野郎の親によく言ったとさ。それよりは亀沢町にて、おれに無礼をする者はなくなったよ。
柔術の稽古場で、みんながおれを憎がって、寒稽古の夜つぶしということをする日、師匠から許しが出て、出席の者が食い物をてんでんに持寄って食うが、おれも重箱へ饅頭《まんじゅう》を入れて行ったが、夜の九ツ時分になると、稽古を休み、皆々、持参のものを出して食うが、おれも旨《うま》いものを食ってやろうと思っていると、みんなが寄って、おれを帯にて縛って、天井へくくし上げおった、その下で残らず寄りおって、おれが饅頭まで食いおる故、上よりしたたかおれが小便をしてやったが、取りちらした食いものへ小便がはねおった故、残らず捨ててしまいおったが、その時はいいきびだと思ったよ
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