の家柄というのも無理はない……と神尾がうなずきました。
神尾の眼で見ては、四十石の家柄だの、検校出の士族だのというものは冷笑以外の何物でもないが、その一門に男谷下総守信友を有することが、侮り易《やす》からずと感じたのです。いかに不感性の神尾といえども、男谷の剣術だけは推服のほかなきことを観念しているところに、この男もまた、その道に相当の覚えがあるものと見なければなりません。
そんなような前置で、神尾は「夢酔独言」の序文を読みはじめました。
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「鶯谷庵独言
おれがこの一両年始めて外出を止められたが毎日毎日|諸々《もろもろ》の著述物の本軍談また御当家の事実いろいろと見たが昔より皆々名大将勇猛の諸士に至るまで事々に天理を知らず諸士を扱うこと又は世を治めるの術治世によらずして或は強勇にし或はほう悪く或はおこり女色におぼれし人々一時は功を立てるといえども久しからずして天下国家をうしない又は智勇の士も聖人の大法に背く輩《やから》は始終の功を立てずして其身の亡びし例をあげてかぞえがたし――」
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読み出して神尾がうんざりせざるを得ません。文章がまずい
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