も、相手がウンともスンとも言わないので、伊東もあぐねて、もう相手にせず、そのまま橋詰を歩き出して、南側の、以前見た焼跡の板囲いのあたりまで来てしまいました。
そうすると、ようやく長い立話を終った斎藤一が、菊桐御紋章の提灯をたずさえて、ここへ近づいて来て、
「いやどうも、旧友に出逢ったので、つい話が入り組んで……」
申しわけたらたら近づいて来たのですが、山崎はついて来ない。橋上にも、橋詰にも、その姿を見ることができない。ドコへか消えてなくなったようなものです。
四十八
伊東と斎藤とは、そこでまた一緒になって、斎藤が御紋章の提灯をさげて先に立つと、伊東が、
「今そこで、拙者も変な人間に出会ったよ、一時は幽霊かと思ったがな」
「誰にですか」
「全く意外な男だ、それ吉田竜太郎――本名は机竜之助という、先年島原から行方不明になったあの男が、今、ひょっこりと、その橋詰の柳の木の下に立っている」
「机竜之助が――」
「あんまり不思議だから、話しかけてみたが、いっこう返答がない、音無しの構えだ」
「そうですか、それは珍しい人物に逢ったものですな、あの先生、島原であんな物狂い
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