前さんは樹上の梨を取って食べた、そうして甘いところの実は、すっかり自分で食べてしまって、食べ残りのしん[#「しん」に傍点]を路傍《みちばた》へ抛《ほう》り出したが、そのしん[#「しん」に傍点]を地上で餓えた蟻が這《は》いよって食べて、それで蟻の命が救われた、お前さんには、たった一つのその功徳がある。その蟻が今の世で人間となって京都へ生れ、木屋町で豆腐屋を開いて、相当に繁昌している、よって、お前さん、母御をつれて、その豆腐屋へ行って相談してごらんなさい」
投げ足の弁天から、これだけのことを教えられて、安然法師も、当座の急を救われる喜びには打たれたけれども、それにしても、弁天の応対ぶりが不愉快であった。弁天様とは言いながら、女の身で、人に挨拶するのに足を投げ出してするとは何だ。かりにも前世や後生のことを語るのに、いくら私が貧鈍で薄徳だからといって、足を投げ出して話をする作法はない――と安然法師はそのことを憤って、お祈りをして弁天様の足を封じたところが、それっきり弁天様の足が動かなくなった。それで、あの弁天様は、永久に足を投げ出したままの不作法をさらしている。投げ足弁天の由来はこうである、
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