。それにつけても、安然大和尚ともあるべき人物が、それほど人望を失っているというのは、よくよくのことなんだろう、いったい、どうした因縁なんですかね、不審の至りですなあ」
「その因縁でございます、その因縁には、実はこういう物語があるんでございます、まあお聞き下さい」
 平田住職は非常に親切に道庵に応対をする。道庵もまた、なんでもかでも聞いて置きたい方だから、神妙に傾聴している。
 小高い山の、赤土に長い赤松が生えて、青い空から晴れた軽い嵐がその梢《こずえ》に送られる。松の間から見る琵琶湖の景色のなごやかさ、湖上湖辺に騒ぎがあるなどとは夢にも思われない。かくて長安寺の裏山で、この変体な寒山と拾得とが、貧乏物語をはじめました。

         三十八

 諦善師が、道庵先生に語るところの因縁物語は、次の如きものでありました――
 安然大師、現世では左様に古今独歩の大学者であったけれども、その前世は甚《はなは》だ薄徳なる一個の六部でありました。そうして、人から受くることばかりで、与えるということを更にしなかった。その報いによって、学徳は左様に高かったけれども、財縁というものが甚だ薄く、修行時
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