なければ人が集まらないという理由の下に、人を入れに入れたものですから、そういう検討をする遑《いとま》がなかった。雑多な人が来て、雑多な性格をぶちまけることを、大まかに容認していたのですから、不破の関守氏は大体をおさめるに急で、個々の分析には及ばなかったのも道理です。
 さて、そういうふうに青嵐居士は、胆吹王国の人種を分類してみましたけれども、その分類によって、処分に手をつけようというのではないのです。それはそのまま単に研究とし、参考の資料として扱いながら、その範囲に於て監督もし、働かせもしているのです。
 そうしてこれらの人種に対して、淡々として一視同仁に眼をかけるものだから、特にこの人を崇拝するという信者も出ない代り、不服や反抗の色を現わすものは一人もありませんでした。
 かくて青嵐居士は、毎朝毎日、王国内を巡視しては、極めて心やすく国民に向って呼びかける、評判はなかなか悪くないのです。

         二十四

 ある日、青嵐居士が、炭焼の釜出し勤務を見廻っていると、一人の青年がたいへん丁寧に挨拶をする途端に、ふところから転がり出して地上に落ちたものがありました。
「何か落ちた
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