申しましたものですから、ついつい失礼な口を利《き》いてしまいました、取るに足らない、たしなみのない人間のことですから、御免下さいませ。では、京へ着きましたら早速お伺いさせていただきます、お大切に」
打って返したような折りかがみをして、お角さんが一行を引連れて、山王様の御門前の方へとゆらりゆらり出かけて行ってしまいました。
土方一行も、それから間もなく、村役人を先に立てて、例の修羅場の名残《なご》りの場へと進発し、そこで、一応の検分をしてから、死体を取片づけさせてしまいましたが、ほどなく馬に乗って、大津の方へと急がせて行く土方歳三――沖田総司が一人ついている。
「土方先生、あれは何です、あの伝法肌の女は、あれは――」
「は、は、は」
と、土方が高らかに笑い、
「松坂屋の一件ですか」
と沖田からたずねられて、土方が笑いながら、そうだとも、そうでないとも言いません。
そうだとも、そうでないとも言わないのは、つまり黙認の形です。
たずねてみれば、この連中としてはたあいのないことでした。
土方歳三が、武州日野在から出て、上野の松坂屋へ丁稚奉公《でっちぼうこう》に入れられたのは、十六七の頃でもあったろう。歳三だから、歳どんとして丁稚をつとめているうちに、その女中の一人といい仲になってしまった。
歳三は右に言う如く、小柄で、色が白く、それにお洒落《しゃれ》ときているから、女の方が夢中になって、とうとうお腹がせり出してしまった。そこで、もう袖でも隠せなくなって、切れるの切れないの、死ぬの生きるの、やいのやいのという沙汰《さた》になると、さすが後年の新撰組の豪傑も、生ける空とてはなかった。それを口を利いてやっと捌《さば》きをつけてやったのが、男の方では佐藤という土地の幅利《はばきき》、女の方ではここに現われた女興行師のお角さん。その弱味を抑えられているから、さすがの豪傑もいささかテレている。こういうたあいない話をしながら二人は、湖面から来るなごやかな風に面を吹かせて、大津の方面に向って急がせて行く。なお残された新撰組の隊士は、いったん山王下に留っていたが、徐々に叡山《えいざん》へ向ってのぼりはじめました。
百八十一
一方、山王様へ参詣の道すがら、お角は狐につままれたような感じがしている。
新撰組というから、鬼を膾《まなす》で食うような豪傑ばかり集
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