、今年三十五の男盛りでございます、近藤隊長は精悍《せいかん》そのもののような面貌《かお》をしておりますが、副将の土方歳三殿は色の白い、やさしい男ぶりでございます、沖田総司様も同様――ほんとうにあんな弱々しい二才風であって、よくまあ、ああも巧妙に剣が使えたものでございますなあ」
 沖田総司のことが、主としてここで話題の人気になってくる。まことや沖田は近藤門下の飛竜であって、小太刀を使わせての俊敏、たとうべくもない。近藤、土方の片腕と恃《たの》まれて、実戦の場数をあくまで経験している。その早業の人目を驚かすこと宜《むべ》なりと言いつべし。痛ましいことには、この天才的剣士は当時肺を病んでいた。呼吸器を日に日に蝕《むしば》まれながら、剣は超人的に伸びて行ったが、この翌年、その肺病のために、この男のみが畳の上で死ぬようなことになるとは、一層の悲惨である。
 立ちかけたお角さんが、そういう噂話を聞いているうちに、後から、のそりのそりと漸く至り着いたところの、お角さんいやがらせ[#「いやがらせ」に傍点]の一行――即ち三ぴん、よた者、折助、安直のならず者の一行であります。
 この時分になって、ようやくこの場へのさばり着いて、そうして、着くと早々、お角さんの方へいやな眼をつかって、キザな笑い方をしながら、またもその鼻っ先へ盆蓙《ぼんござ》を敷いてしまいました。
 またしてもここで、丁半、ちょぼ一、南京《ナンキン》ばくちをはじめて、江戸ッ児のお角をいやがらせようというたくらみに相違ないが、その時、またも店の中がざわめき渡って、
「あ、また、新撰組のお方がおいでになった」
「ナニ、新撰組!」
「真先においでになるのが、あれが、新撰組の副将、土方歳三様でございます」
「ナニ、土方」
「その次のが、今お話の沖田総司殿!」
「ナニ、沖田!」
 新撰組の名を聞いて、一口上げに狼狽周章を極めているのは、例のその三ぴん、よた者、折助、ならず者――お角さんいやがらせ[#「いやがらせ」に傍点]の盆蓙連であります。

         百七十八

 彼等は思いがけなく新撰組の名を聞いて狼狽し、慄《ふる》え上り、ついに面《かお》の色を失って早々に盆蓙をふるい、こそこそと逃げ隠れてしまいました。
 以前からここに控えていた連中は、またグッと引締ったけれども、よた者連のように逃げ隠れはしませんでした。
 お角さ
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