ざんすね、普通の人情としても、人間の亡骸《なきがら》なんぞは、見せものにすべきはずのものじゃございませんね」
と言ったのを、店の亭主が、手を挙げて共鳴するような、制御するような恰好《かっこう》をして、
「そ、それでございます、いかにも、おっしゃる通り、あれはあのまま、ああして置き申してはならんのでござんすが……それがなんでございますよ、新撰組のお方が、もう一ぺんおいでになるまでは、誰にも手がつけられないのでございましてね」
お角さんは、その返答にも不満でありました。
「新撰組とやらのお方に、手がつけられなければ、土地のお代官様の方で、何とかならないものでございますか、この土地にも、御領主様や、お奉行様がいらっしゃるでしょう、そのお手でもって、何とかして上げて、あったらおさむらいの亡骸を、犬猫の屍体同様に、道路に曝《さら》して置きたくはないものでございますね、何とかして上げられないものでございますかねえ」
と、不満の上に、お角さんが浩歎《こうたん》すると、亭主も、村役も自分の事のように当惑した面《かお》をして、
「それが、その、御領主様のお手でも、お奉行様のお力でも、新撰組のお方がもう一ぺんお出ましになるまでは、どうにも手がつけられないんでございまして」
「それでは、御領主様よりも、お奉行様よりも、新撰組とおっしゃる方々の方が、御威勢が強いわけなんでございますね」
とお角さんが、なお中ッ腹で、押返してたずねてみますと、
「そ、それがその、御時勢でございますからな――」
いずれも、深くそのことに触れるのを怖れるものの如く、言葉を濁しますものですから、お角さんが、いよいよ納得がゆきませんでした。
百七十五
一匹一人の侍を、ああして幾人も大道の真中へ斬捨てて、白昼野天の見世物に供して置いて、それに、領主も奉行も手がつけられない。新撰組なるもののいかに傍若無人で、横暴残忍を極むるの存在であるかに、お角さんも、決していい心持がしませんでした。
しかし、泣く児と地頭には勝たれないというその地頭以上の勢力には、さすが気おいのお角親方といえども沈黙するよりほかはありません。
右の不服不満は、お角親方に限ったものではない、誰でも同様に不快とし、不満として、あれを見ないものはないのです。ですが、それを如何《いかん》ともすることのできない事情の存することを聞
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