をするだけの度胸はない、万一、何か手でも出しゃがッたら、只は置かないよ、こういう時に、あの友兄いの奴でもいりゃ、思いきり眼にもの見せてやるんだが、なあに、あの辺のお安いところならば、このお角さんの一睨《ひとにら》みでたくさんだ――
 とお角さんは、充分にこいつらを見くびりながら、山王様の方へ進んで行きました。
 お角さんの見くびった通り、こいつらは、いやがらせ[#「いやがらせ」に傍点]以上のことを為し得る奴等ではないかも知れないが、そのいやがらせも、こっちの虫のいどころによっては、事が起らないとも限らない。
 こうして、お角さんは、送り狼だか送りよた[#「よた」に傍点]者だかわからない奴等に送られて、山王を目指して行きましたが、一行のうちの誰もが、お角さんのそんな腹の中には気がつかず、相変らず遊山気取りでブラリブラリと進んで行きました。
 ところが、まもなく、一行のすべてのこのいい気分が、ぶち壊されて、ふるいおののくような事件が出現したのは是非もないことです。それは、うしろから、例のよた者が、急にふるい立って殺到して来たわけではない。松並木になって、左右が畷《なわて》に続いている札場のところまで来て、
「ああ、怖《こわ》――」
と、殿《しんがり》として後ろにやや離れていたお角さんを別にして、一行の者が往手《ゆくて》をのぞんで立ちすくんでしまいました。
 見れば、その松並木の松の根方や往来へ半ばかかったり、畷道へのめったり、甚《はなはだ》しいのは、往還の真中へ重なり合った、人間の死骸の山です。
 みんな斬られている。どこを、どう斬られているかわからないが、無慮五六人の屍骸は、眼通りに斬り斃《たお》されて散乱している。しかも、斬られたこれらの人体《にんてい》を見ると、後ろからついて来ている送りよた[#「よた」に傍点]者の種類とは違って、いずれも、れっきとした武士姿である。それも、それぞれ充分に身固めをして、しかも、いずれも白刃を抜いて手にかざしたり、取落したりしたまま、右のように散乱と斬り倒されている。
 斬られたには斬られたに相違ないが、やみやみと斬られたのではない。斬る方も、斬られる方も、充分覚悟の上で、おのおの死力を尽して戦った結果がこれなのだ。数えてみると、六人が物の見事に斬られてはいるが、斬ったのは何者。それはわからないが、斬られて斬られっ放しで、収容する者が
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