しかしながら、これは米友の眼の誤りでないことは勿論《もちろん》、弁信の勘の間違いでもなかったのです。
 竹生島を南へ三里余の湖上に、竹島というのがある。一名|多景島《たけしま》ともいう。そこへ二人は小舟を着けたのです。悲しいかな、能弁博学の弁信法師も、竹生島あることを知って、竹島あることを知りませんでした。米友に至っては、巧者ぶった弁信の鼻っぱしを少々へし折ってやった気持で、揚々として舟を沿岸の一角につけてみました。
 そうして置いて、弁信を舟から助け出したのですが、その時に弁信は、もう座前へ置いた琵琶を頭高《かしらだか》に背負いこんで、杖をつき立てていました。
 米友が案内に立って、この岩角の一方に路を求めつつ島の表口へ出ようとしたが、篠竹《しのだけ》が夥《おびただ》しく生えていて道らしい道がないので、押分け押分け案内をつとめ、ようやく小高い一角へ出ると、そこで早くも弁信のお喋《しゃべ》りが展開されてしまいました。
「米友さん――やっぱり違いました、この島は竹生島ではございません」
「じゃあ、何という島だ」
「何という島だか、わたくしは聞いてまいりませんでしたが、たしかに違います、竹生島と申しまする島は、金輪際《こんりんざい》から浮き出た島でございまして、東西南北二十余町と承りましたが、この島はそれほど大きい島ではございません」
「はーてな」
「これは何という島か存じませんが、ずっと小さな島です、多分人間は住んでおりますまい。ともかく高いところまで登りつめてごらんなさい、そうすれば必ず四方見晴しにきまっております、そこで、あなたの眼でよく見定めていただきましょう、竹生島は、あちらの方へさほど遠からぬところに見えなければならないはずでございます、南の方は陸つづき、多分、彦根のお城の方になりましょう、あなたの目でよく見届けていただきます」
「よし来た」
 米友は、心得て弁信を案内し、道なき岩道をのぼりかけたが、竹が多いし、大木もある、その木の上に真黒い鳥が夥しくいる。巌の下の淵《ふち》をのぞくと、また夥しい美鳥がいる。
「下のは鴨、上の真黒いのは何だい、烏じゃねえ、鵜《う》だ、鵜だ――畜生、逃げやがらねえ」
と、岩角で地団駄を踏んでみて舌を捲いたのは、この夥しい鳥が、ちょっとやそっと威《おど》してみたところで、お感じのないことです。
「畜生、畜生――」
 米友が
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