いか」
「もう駄目だよ」
仏須寺が頭を振るのがよくわかる。そうすると、丸山勇仙が、
「もう駄目だよ、君と僕たちとの距離は、単に山の上と下だけの距離じゃないんだ、我々は君のところへ下りて行けない、君は、我々のところまで上って来られない、そこにいて話をするさ」
「ちぇッ」
と兵馬は、それをもどかしがりながら、思いきって、
「では、ここで君たちにたずねたいが、机竜之助は今どこにいるのだ、君たちが隠したとは言わないが、たしかにそれを知っているように思われてならぬ、それをひとつ明かして行ってくれ給え」
「なに、机竜之助?」
「うむ、机竜之助の行方《ゆくえ》だ」
「おい、丸山」
と、これは仏頂寺の声で、兵馬の問いに答えたのではなく、丸山勇仙をかえりみて、とぼけたような声で、
「君、机竜之助とかなんとかいう人物を知っているかい」
「何だって、机竜之助?」
丸山勇仙が、またとぼけた面《かお》をしているので、兵馬がむっとしました。
百二十三
「君たち、しらを切ってはいけないよ、君たちが机竜之助を隠している。隠していないとすれば、少なくとも拙者が竜之助にめぐり会うべき機会を妨げた――信州の諏訪以来、覚えがあるだろう」
と兵馬から厳しく、こうたしなめられると、はじめて二人が気がついたように、面を見合わせて、
「ああそうか、あのことか、あれか」
「どこにいるか、その在所《ありか》を教えてくれ給え、明白に言えなければ、暗示だけでも与えてくれ給え」
兵馬が畳みかけて追い迫ると、仏頂寺は呑込み面に、
「あれはな、宇津木君の推察通り、いささか妨げをしてみたよ、意地悪をしたわけじゃない、人から頼まれたんだ」
「誰に頼まれた」
「それは、甲州の豪族の娘で、俗にお銀様といって、なかなかの代物《しろもの》だ、その人に我々が余儀なく頼まれてな」
「うむ、あのお銀様という女――あれなら僕も知っている」
と、兵馬もそう答えざるを得ませんでした。そうすると仏頂寺が、
「あのお銀様という女に頼まれてな、宇津木兵馬が、机竜之助を兄の仇《かたき》だと言って、つけ覘《ねら》っている、これから信州の白骨へ行こうとする、会わせては事が面倒だから、どうか、二人を会わせないようにしてくれと、我々に頼んだのだ」
「そうか。そうして、それから?」
「そこで、我々はちょっと迷ったよ、宇津木のためには、早く会
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