差支えないが、さりとて、相当堅気のものも好奇《ものずき》で寄って来ている。
悪食には、品質を主とするものと、趣向を先とするものがあって、品質を主とするものには、蜥蜴《とかげ》の腸だの、蛇の肝だの、鰐《わに》の舌ベロだのといって、求めても容易に得られざる悪食を持寄って、そのあくどい程度に於て優劣がある。趣向を主とするものには、材料そのものは、あえて珍奇であることを必要としない、その材料の取扱い方によって、悪食の気分を豊富にする。
今日の会は、その後者を撰んだのでありました。すなわち材料そのものは、つとめて通常の材料をとり、これをできるだけ嘔吐《おうと》を催し、嫌悪《けんお》を起させる悪食に変化して食わせることに腕を見せる――というのが、今日の趣向であったのです。
そこで、みな相当に腕によりをかけて、その趣向を充たさせて、今か今かと待構えているうちに、会員の一名、神尾が来ない。それを待侘《まちわ》びているうちに、玄関のけたたましい叫び――人間が一人ころがり込んで、息が絶えてしまったのです。
百十一
そこで、悪食連も驚いて出て見ると、玄関に転げ込んで、かわいそうに息が絶えているのは、今も今、問題にしていた鐚でした。
「鐚だ」
「鐚が気絶している」
「水を吹きかけろ」
「鐚――鐚やあーい」
呼び続けると、直ちによみがえりました。
「鐚――気がついたか」
「鐚――しっかりしろ」
「鐚――」
広間へ担《かつ》ぎ込んで、そうして事情を聞いてみると前段の始末です。
それ! と集まった悪食連のうちから、逸《はや》り男《お》が飛び出してみたけれども、もう後の祭りで、町の巷《ちまた》の動揺もすっかり静まり返っていたところですから、手持無沙汰で帰っては来たが、このままでは済まされない。鐚は鐚で休息させて置いて、一手は神尾の行方を突きとめにかかりました。
しかし、それも大っぴらにしてはかえっていけない。神尾のやり方が穏かでないにきまっているから、騒いだ日には藪蛇《やぶへび》になるばかりか、自分たちもとばっちり[#「とばっちり」に傍点]を蒙《こうむ》るにきまっている。内々で手分けをして探してみたけれど、根岸の宅へも戻っていない、さりとてとり押えられたという気配もない。杳《よう》として消息が知れないから、まあもう少し落着いてゆるゆる探してやろう。本心に立ちか
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