したって、そう遠いところではない、目と鼻の間、呼べば答えるところにあるあの胆吹山の麓のことだから、同じ用心棒でも、東路《あずまじ》の道のはてから遥々《はるばる》の用心棒とは違う――ではひとつ追いかけてやろう。
 米友は教えられた通りの道を追いかけました。来た時の道を帰れば、石田、大原から北国|脇往還《わきおうかん》を横切って春照《しゅんしょう》に出るのだが、帰る道としては七尾へ廻るだけのものです。
 かくして米友は、教えられた通りに、両替の馬のあとを追いました。
 ところが、いよいよ心配無用、裏道の棒鼻まで廻る必要はなし、早くも町の真中で、ぱったりとその馬に出くわしてしまいました。無論、馬の脇には番頭と馬子がちゃんと無事に附いているのです。ただ違ったのは、馬が夥《おびただ》しく荷物を背負わせられている。夥しいといっても、それはカサだけで、正味はそんなに重いものではない、新生活に必要な家具類が――行燈《あんどん》からとうすみ[#「とうすみ」に傍点]に至るまで、積めるだけ積込んである。見た目のカサは大したものだが、重量はそんなではないから、馬は平気な面をしてのこのこと歩いて来る。
「兄さん、お待たせ申して済みません」
と、早くも米友の姿を認めて、先方の番頭から言いかけられて、米友がはにかみました。どちらがお待たせ申して済みませんだかわからない。
 なお、その番頭さんの言うことには、表街道が物騒がしいようだから、裏街道を通るつもりでしたけれども、こうして、兄さんにここでお会いしてみれば、どうもわざわざ裏廻りをするのはやめにして、やっぱりもと来た大通りを帰りましょう。
 そうさ、それに越したことはない、なにも、こちとらは盗み泥棒をしたわけじゃなし、天下の往来を、逃げ隠れをするような真似《まね》をしなくてもいい――米友も直ちに同意しましたから、そこで、一行が無事に長浜の町を出て、もと来た道を帰ることになりました。
 それでもこの一行のおそれるところは、途中、その江戸の御老中からの検地のお役人というのに出くわさなければいいがな、出くわしたところで、自分たちは、いま兄さんの言う通り、盗み泥棒をしているわけじゃなし、年貢の滞納や、隠田《かくしだ》のとりいれをごまかしているという弱味もないのだから、強《し》いて御無礼をしない限り、おそれるわけはないのですが、それでも、道中、お役人だの
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