わりをうろつきはじめました。
 会所のまわりを、塀《へい》の隅っこのところまで行ってまた逆戻りをしたり、溝《みぞ》の中に柿の種子が落ちていたり手鞠《てまり》がころげ込んだりしているのを見たりなんぞして、行きつ戻りつしているうちに、まだ埒《らち》があかない。こんどは表通りを少し遠っ走りして、湖の水の見えるところまで行って引返そうとする時、そこに高札場があって、幾つもの札のかけてあるのを見つけました。その高札を片っ端から読んでみますと、その真中の一番大きいのに、次の如く書いてありました。
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   「定
何事によらず、よろしからざることに百姓大勢申合せ候を、とたう[#「とたう」に傍点]ととなへ、とたうして、しひて願事企てるを、がうそ[#「がうそ」に傍点]と言ひ、あるひは申合せ、村方立退候を、てうさん[#「てうさん」に傍点]と申し、他村にかぎらず、早々其筋の役所に申出づべし、御褒美として、
 とたうの訴人《そにん》  銀百枚
 がうその訴人  同断
 てうさんの訴人 同断
右之通下され、その品により帯刀苗字も御免あるべき間、たとひ一旦同類になるとも、発言いたし候ものの名前申出づるにおいては、その科《とが》をゆるされ、御褒美下さるべし。
一、右類訴いたすものなく、村々騒立候節、村内のものを差押へ、とたうにくははらせず一人もさしいださざる村方これあらば、村役人にても、百姓にても、重にとりしづめ候ものは、御はうび下され、帯刀苗字御免、さしつづきしづめ候ものどもこれあらば、それぞれ御褒美下しおかるべきもの也
  年月日[#地から2字上げ]奉行」
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 米友は、お君に言わせると学者ですから、苦もなくこれを読んでしまって、
「ははあ、一味ととうしちゃいけねえってえんだな、申合せをして村方を立退くのもよくねえてえんだな、それを訴人しろてえんだなあ、訴人した奴には銀百枚を御褒美として下しおかれようてえんだな、なお、その上に、次第によっちゃ苗字帯刀も御免あろうてえんだな」
と言って米友は、高札の表を横目に睨《にら》み、
「一味ととうして乱暴を働くのが悪いのはわかり切ってるが、百姓共だって酔興で一味ととうをするわけじゃあるめえ、何か苦しくって堪らねえことがあるか、そうでなければ、おだてる奴があってそうなるんだろう、それを訴人した奴には御褒美が出るんだ
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