、但し画嚢《ぐわなう》の方は、騰驤磊落《とうじやうらいらく》三万匹を以て満たされ居り候へば、この中に乗黄もあるべく、昭夜白も存すべく、はた未来の生※[#「口+妾」、第4水準2−4−1]《いけずき》、磨墨《するすみ》も活躍致すべく候へば、自今、馬を描くに於ては、敢《あ》へて江都王に譲らざるの夜郎を贏《か》ち得たることにのみ御一笑下され度候――(後略)」
[#ここで字下げ終わり]
 右の如くにして、白河の城下を立ち出でた白雲は、同行の奇士雲井なにがしとは、これより先いずれのところで袂をわかったかわからないが、白雲|飄々《ひょうひょう》の旅を、行けという者も、とまれと呼ぶ者もありません。



底本:「大菩薩峠13」ちくま文庫、筑摩書房
   1996(平成8)年6月24日第1刷発行
   「大菩薩峠14」ちくま文庫、筑摩書房
   1996(平成8)年6月24日第1刷発行
底本の親本:「大菩薩峠 八」筑摩書房
   1976(昭和51)年6月20日初版発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:tatsuki
校正:原田頌子

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