も昔なじみであるらしい呼び方をするために、この小坊主が一時は、妖怪変化の身でもありはしないかとさえ、物すさまじく感じたからです。
 それにもかかわらず弁信は、いよいよ心得たもので、
「間違いありません、久助さんに間違いありませんから、どうぞ、どなたか戸をあけてあげてくださいませ。何か、やむにやまれぬ用事があればこそ、夜分、こうして出て参ったのでございましょう……わたくしも、久しぶりで久助さんに逢って、積るお話をお聴き申さなければなりません……」



底本:「大菩薩峠13」ちくま文庫、筑摩書房
   1996(平成8)年6月24日第1刷発行
底本の親本:「大菩薩峠 七」筑摩書房
   1976(昭和51)年6月20日初版発行
   「大菩薩峠 八」筑摩書房
   1976(昭和51)年6月20日初版発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:tatsuki
校正:原田頌子
2004年1月9日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作
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