と、生きた者との区別がわからなくなってしまった。今の現在と、空想との境がわからなくなってしまった。
あの船で、あの女の子たちと共に久しぶりで帰って来た故郷の拝田村――お君が待ち兼ねている――
「友さん、どうしたの、わたしはこうして、さっきから待っているのに、それにどうしてお前、そんなに来るのが遅いの、なぜ前の船で来てくれなかったの、ごらんよ、この家を、お前の家を。二人が逃げ出した時のまま、そっくりじゃないの」
「おお、拝田村のおらが住居《すまい》よ」
「庭には鶏頭《けいとう》がある――ざくろがある、黍畑《きびばたけ》がある、鶏が遊んでいる、おお、おお、鼬《いたち》が出やがった、そら」
上《あが》り框《がまち》、鉄瓶、自在鍵――
「あの晩、わたしが、備前屋さんで、盗みの疑いを受けて、お前のところへ逃げて来たろう。そら、あの時のまま、そっくりじゃないの――」
「ああ、ムクがいない――ムクは、どうしたやい」
「まあ、友さん、あれから二人が夢中で山の方へ逃げましたね。あれっきり、この家へは帰らないでしょう。それだのに、お前、格別荒れもしないで、昔のままじゃないの。お上りよ、そんなに怖がることはないわ、もう今じゃ、土地の人、誰だって、わたしたちを疑ぐるようなものはありゃしない、みんな、むじつの罪だということがわかっているのよ」
「でも、ムクがいないね」
「どうしたろう、あの犬は、殺されちまやしないかね。友さん、お前、来るぐらいなら、どうしてムクをつれて来なかったの――」
「まあ、いいからお上りな、ムクのことは、あとで、ゆっくり探すとしましょうよ」
「どうしたの、友さん、そんなに棒のように黙って突立っていてさ」
「わたしじゃない、わたしをお前忘れてしまったの?」
「え、それじゃお前、まだあのことを根に持っているの?」
「わたしが、駒井の殿様のお情けを受けたのを、お前はまだ憎んでいるの、もう、いいじゃないの、もう、そんなことはお前、忘れてしまってくれてもいいじゃないの、おたがいにこうして故郷へ帰ったんじゃないの――ここで二人で、もう、昔の通りに仲よく暮らしましょうよ」
米友さん、
どうしたの?
どうしたというのさ、
黙って突立っていて……
怖いわよ――
まあ――
「おっと、あぶない、若衆《わかいしゅ》――」
後ろに船頭があって、留めることがなければ、米友はその時
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