かねて打合せもあったのか、別段にこだわらずに、少年の提言の通りに事が運んでしまいました。往来にある屍体は、田の中へ叩き込み、そうして、六七名の者は、そのまま散々《ちりぢり》に姿を隠してしまいました。
少年は、そのあとで、矢立を出して、さらさらと何か紙の表に認《したた》めて、それを取りかたづけた屍体の上に置いて、髪の乱れと、衣紋《えもん》の塵を打払って立つところへ、お角が飛んで来ました。
お角と、右の少年とが、そこでしばらく囁《ささや》き合っていたようですが、これも格別のこだわりなく、少年はお角に導かれて、松林の中へ入りました。
そうして、すすめられるままに、しつこい辞退もせずに、お角の乗った駕籠《かご》に乗り込んだのはいいが、つづいて同じ駕籠に、お角があいのりをしてしまったのは、事情はとにかく、駕籠屋が少し面食いましょう。
だが、お角は女のことであるし、少年は小柄のことであるし、両人合わせたからとて、その目方は到底一人の力士を乗せたほどのことはあるまい……
そこで一行の駕籠が、朝まだきの活劇を一幕残して、東海道の並木の嵐を合方《あいかた》に、大はまの立場《たてば》も素通りをしてしまいました。
五十一
そんなことで、この一行は、その晩は鳴海《なるみ》へ泊ることになりました。
強行すれば、宮か名古屋へは着けないではなかったが、万事この方が余裕があってよいと思ったのです。それに、鳴海、有松絞りといったようなところと、品が、女だけに、この一行を引きつけたのかも知れません。
宿へ着いて――お角は、例の美少年を上座に招じて、委細の物語を聞きはじめました。
その語るところによると、岡崎藩でも武術の家に生れ、去年のこと、朋輩《ほうばい》と口論の末、果し合い同然のことをやり出し、相手を傷つけて死に至らしめたが、表面は穏便《おんびん》につくろっておいてもらったけれど、今後の場合、かりにも刀を抜くような振舞がある時は容赦せぬ、との厳しい父の言いつけを蒙《こうむ》っていたこと。
しかし、天性、利発で、侠気があって、腕が優れているというところが、どこまでも祟《たた》るらしい。
今度も、昨日の名古屋者のために、かりにも自分の藩中の者が、大恥辱を曝《さら》して帰ったということを聞き、それが自分の友人関係でもあり、一藩の恥辱にもなるという義憤が燃え、そう
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