いよいよ強気になり、
「さんぴん、これでも斬れねえか」
いきなり、平手で、さむらいの頬を打ちにかかったものだから、もう破裂、二人がさっと抜いてしまいました。
「抜きやがったな、しゃら臭《くせ》え」
松五郎が石を拾って目潰《めつぶ》しをくれる、それを合図に、身内の若いのが、同じように目つぶしの雨を降らせる。
芸妓連は、悲鳴を上げて逃げるのもあれば、遠くから石を投げて助太刀《すけだち》のつもりでいるのもある。弥次の石が、飛びはじめる。
それから後の乱闘と、二人のさむらいの立場は見るも無惨なものです。
抜きは抜いたが、もう、すっかり度胆を抜かれているところだから、日頃学んだ剣術も、さっぱり役には立たない。松五郎の身内に追い詰められて、弥次に逃げ場をふさがれ、やがて抜刀を奪い取られて、しばらく組んずほぐれつ、河原でこね合ってみたが、やがて、思う存分の手ごめに遭って、袋叩き、石こづき、髪も、面《かお》も、めちゃめちゃにかきむしられて、着物も、袴も、さんざんに引裂かれ――その後に、帯刀は大小ともに鞘《さや》ぐるみ奪い取られてしまって、ついに半死半生の体を、河原へかつぎ込んで、河の中へ投げ込まれてしまったのは、全く見ていられない。暫く、浅い川の中に、浮きつ沈みつしていた件《くだん》の若ざむらい二人は、それでも命からがら起き上り、向うの岸へのたりついて、這《は》い上り、水びたしになり、打擲《ちょうちゃく》に痛むからだで、びっこを引き引き向うの道へ、のたりついて行く、その姿が消えるまで、衆人環視の間にさらされたのは、自業自得とはいえ、悲惨の極みといわねばなりません。
それを、ザマあ見やがれ! という表情で見送っていた料理屋連――その親方は、二人の悪ざむらいから奪い取った大小をからげて、
「こいつは、会所へ届けておかにゃならねえ」
荷かつぎに持たせているところへ、贔屓《ひいき》の相撲連がやって来て、そうして彼等一同は、やはり勝ちほこった気持に充ち満ちて、相撲小屋の方へ引上げてしまいました。
一切の事情を、目《ま》のあたり見ていたお角さん――いよいよいけないと思いました。筋から言えば、道理はこちらにあるに相違ないが、お角の眼では、料理屋連の出ようが、やり過ぎていること――これがこれだけで済めばいいようなものの――済むはずがない。それを存外、買方は気にかけていないようだが、
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