のなら、立派に斬られてごろうじ、骨はわしたちが拾って帰りやす、さあ、おさむらい衆、うちの兄さんを、お斬りなさい――立派にお斬りなさい」
そこで、親方が、いよいよ強気になる。
「さあ、斬られましょう、夜討や暗撃《やみうち》を喰うのと違って、こうして晴れた明るい天気、千万という皆様のごらんなさる前で、腕のお立ちなさる若いさむらいさん方のお手で、さっぱりとやられたら、ずいぶん、気持のいいことでございましょう、このごろは悪血《あくち》が肩へ凝《こ》ってどもならん、ここの肩のところから、すっぱりやって下さんせ、さあ、お斬りなさい」
と身体《からだ》を突きつけたものです。
この体《てい》をお角さんが見て、ははあと一切を合点しているうちに、立会の者の囁《ささや》くところを聞いていると、この傍若無人の悪ざむらいが、今までの手並で、この芸妓連を見かけると、得たりとばかり分け入って、いちいちその頬っぺたを撫で歩いたのが、喧嘩のもとだということです。
案の定!
お角としては、自分たちが引受けねばならなかった役廻りを、この芸妓連の一行が買い受けてくれたようにも思われて、本来は、痛快を感じて、多少声援の役廻りでもつとめねばならぬ立場であり、そういう際には、引込んでいる女ではないのですが、この際は、どういうわけか、さほど気が進みませんでした。
これは、悪ざむらいたちの不埒《ふらち》は、申すまでもないが、それを買って出たこの一行連の強気も、あんまり感心したものではないと見たからです。
どうも、この連中は、降りかかった難儀のために、やむにやまれず、喧嘩を買って出たというよりも、周囲の同情が自分たちの方に有利な形勢を見て、どうも少々増長気味があるらしい。それに、見損うない、かいなでの在郷連と違った兄さんだぞという見得《みえ》で、後ろに声援の芸妓連をはじめ、群がる見物人の手前という衒気《てらい》が充分に見えきっているから、お角がこれはよくないと思いました。喧嘩を売った方は、もとよりのことだが、この喧嘩の買いっぷりが本筋でない!
ああまでしなくってもよい、若ざむらいの悪いのは、もとよりわかっているが、あれは若気の至りに酒があって、あたりの在郷連の間に、自分たちの身分に慢心しきって、人が一目置いて行くのをいい気になってしまったというまでで、かなりアクドいふざけ方はするが、避ければ、強《し》い
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