ますから、お角がそのところに立ち塞がりました。
「ホ、ホ、ホ、たいそうよいお機嫌でいらっしゃいますね、でもお足許がおあぶのうございますよ」
 こういった気合に、二人の生酔いの悪ざむらいがちょっと気を呑まれた形でした。
 その途端に、連れて来た、六さんといって喧嘩上手で聞えた兄《あに》いが、ちょっと江戸前の喧嘩っ早い息を見せたのが、近郷近在連とは手ごたえが違ったと見たのかも知れません、何ということなしに機先を制せられて、そのまま、二人の生酔いの悪ざむらいは、鋒先《ほこさき》をそらして、ずっと前へ進んでしまいました。
 つむじ風をやり過ごして、足並みを立て直したお銀様とお角の一行――
「飛んだ金十郎だよ」
とお角が、軽蔑の冷笑を後ろから浴びせているにもかかわらず、二人の生酔いの若ざむらいは、なお行く手の見物人に存分悪ふざけを試みながら行くのを見て、この分で、相撲小屋へつくまで、また場内へ入ってから後に間違いがなければいいが――と気を揉んだのはお角さんばかりではありません。同じ金十郎にしても、アクドい。
 間違いがなければいいが――
 果して……まだそれとは言えないが、一町程の先手《さきて》、ちょうど、赤坂口と藤川口とが落合うあたりの辻のところで、
「喧嘩だ、喧嘩だ――」
 それ見たことか。見ているまに、黒山となった人だかりが容易に崩れないのは、喧嘩のたちが悪くなったに相違ない。
 当然、行くべき道筋、お角さんの一行は、いやでもその場へ通りかからねばなりません。喧嘩の売り方は言うまでもなく、さいぜんの生酔いの二人の若ざむらいで、それを買ったのは、町人風であるらしい。
 その町人の後ろには、男の連れが三人ばかりあって、これが、町人に応援している。この町人の一行はかなり贅沢《ぜいたく》な身なりをして、垢抜《あかぬ》けのしたところ、どうもこの辺の小商人《こあきんど》とは見えない。そうかといって、しかるべき大店《おおだな》の旦那とか、素封家とかいうものとも見えない。女郎屋の主人とか、料理屋の亭主とかいったような感じの男であって、それにつき従う二三の者も、その身内であったり、従者であったりするらしい。さればこそ、売られた喧嘩を買っている。普通の金持ではやすやすと、売られた喧嘩を買いはすまい。
 この町人の一《いち》まきはそれだけではない、後ろを見ると、十余名の芸妓、雛妓《すうぎ》の
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