、あたりまえの人間の本性なのじゃないか知らと思っておりますのよ。だから、マドロスさんだけを危険がったり、憎がったりするのは不公平だと、わたしは考えました」
「そうすると、男という男は、みんな野獣のようなものか」
「いいえ、そうじゃありません、女が誘いをかけるように出来ているから、そうなるのですね。罪といえば、罪のもとはかえって女にあるかも知れません、女に誘惑の力が無ければ、男が危険をおかしてまで寄って来るはずがございませんもの」
「それじゃお前は、男の暴力を是認しているのだね、暴力の前に、女というものの貞操は食い物にされるということを、あたりまえと許している」
「貞操なんていうものは……わたしは頭が悪いからよくわかりませんが、ずいぶん手前勝手なものじゃありません?」
「貞操というものが、手前勝手のものだって……」
「ええ」
「少し頭を静かにした方がいい」
「いいえ、静かになっておりますのよ、わたしの方が、今日は殿様より静かになっているかも知れません。わたしは、男にしても、女にしても、貞操というものはずいぶん手前勝手なものじゃないか知らと、このごろ中、考えさせられていました」
「…………」
「マドロスさんは乱暴には相違ないが、それを憎むわたしたちが男だとしまして、そうして、マドロスさんがしたような事を、決してしないと言いきることができましょうか」
「男性のした最も下劣にして、不謹慎な仕事が憎めない?」
「いいえ、すべての男子の方が、女を弄《もてあそ》ぼうとなさる時分に、その受入れ方に違いがあるばかりです、これがもしかりに、お大尽や高い身分のお方でしたら、その身分が表面を綺麗《きれい》にし、マドロスさんのような場合には、現われ方が乱暴になるばかりです、どちらにしても、男の方が女を弄ぼうとなさる心持は、同じ事じゃありませんか」
「…………」
「何不自由のない人が、力ずくや、金の力で、幾人の女を弄んでいる世の中に、情に飢《かつ》えた外国生れのマドロスさんが、これを欲しがったって、それほどに悪い事でありますか知ら、どちらかといえば、かわいそうなものと言ってもいいのじゃないでしょうか」
兵部の娘は平気で、こんな事を言い出しました。こんな論法をがんりき[#「がんりき」に傍点]の百にでも向けようものならば、「それほどかわいそうなら、いくらでも振舞ってやんねえ」と、極めて露骨なる揶
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