たのは、もうこれで三度目です。このままにして置いては悪いが、そうかといって、呼びさませばなお始末が悪いかも知れぬ。第一、持運びにも困難だ。
「よし、誰か取りによこそう、このままにして置け」
苦りきった駒井は、茂太郎を促して、その場を去ってしまいました。
そうして、駒井は陣屋へ帰って来て、内外を一巡して見たが、マドロスの不在のほかには、別に異状がありません。
兵部の娘も、金椎《キンツイ》も、おのおの、牀《とこ》について、安らかに眠りに落ちているようです。
「茂君、お前、もうよろしいからお休み」
提灯を消して、蝋燭《ろうそく》の煙をながめていた茂太郎が、
「殿様、マドロスさんをどうしましょう」
「そうだな」
駒井は思い出したように、
「貞さんを呼びましょうか」
「もう寝ているだろう」
「起しましょうか」
「気の毒だ」
「では、金椎さんと、わたし、二人で行ってマドロスさんを、かついで来ましょうか」
「金椎もよく寝ているのにかわいそうだ、それに二人の力ではかつげまい、まあ、いいから、ほうって置け」
「では、マドロスさんを今晩中、あのままにして置きますか」
「一晩、すずませてやれ、生命には仔細あるまい、そのうち酔いがさめると、ひとりで帰って来る」
「では、かまわないで、ほうって置いてみましょうか。でも狼に食われるといけませんね」
「そんなことがあるものか、よしよし、お前はお休み」
「では、殿様もお休みあそばせ」
こう言って、茂太郎は、おとなしく、自分の部屋に戻りました。
自分の部屋といううちに、この子は部屋を二つ持っている。ある時は金椎と枕を並べ、ある時は兵部の娘のところに居候をする。
こんな場合には、兵部の娘を驚かさないで、金椎の部屋に行くのを例とする。少しぐらい、物音を立てても、金椎の夢を驚かすことはないが、兵部の娘は、ささやかな物の動揺にも目をさます。
茂太郎は、金椎のよく眠っている面《かお》を見ながら、自分も帯を解いて、それと並んだ蒲団《ふとん》に寄添うようにして、枕につきました。
駒井甚三郎は、どっかと椅子に腰を卸した。けれども、急に眠ろうという気にはなれません。それはあえて、路傍へ寝かしておくマドロスのことが気になるからではありません。時としては、こんな際に、また研究心が突発して、卓子《テーブル》に向き直り、寝ないで一夜を明かすこともあるのです
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