請と存じますが、いかほど大きなお家でも、一夜のうちに灰となることは不思議でございません、けれども、それを一夜のうちに組立てることはできないのでございます。物を亡ぼすのが愛の仕事でございません、物をはぐくみ育てるのが愛の仕事でございます。つまり、あなた御自身が、はぐくみ育てられた恩愛というものを知ることが浅いので、物を育てるの妙味がおわかりにならないのですね、はぐくみ育てるの苦労というものを御存じないから、それで同情というものが生れて参りません――あなたは何不自由なくお育ちになりました、あなたはその豊富な生活の資料というものが、当然の権利として与えられたもののようにお考えになって、我儘《わがまま》というものは、誰にも許される人間の自由だとお考えになって、それで今日まで過ごしておいでになりました、多くの人が悩む生活の窮乏というものに、性来の御経験が無いのはあなたの幸福ではありませんでした。しかのみならず、あなたはお身体《からだ》もお丈夫で、今日まで、病気らしい病気におかかりになったことがないとのお話も承っておりましたが、それも、あなたの幸福ではございません、病気の経験の無い者を、友達にするなと古《いにし》えの人が申しました。あなたの恵まれたる生活がかえって、あなたの不幸でございました。それゆえに、何か不平不満の起りました時には、あなたは自分の仇敵《きゅうてき》のために、自分の持場を荒されたように、身も、世も、あられず、憤怒の火で心の徳を焼いておしまいになります、不平、不満の起りました時、ついぞあなたは、今まで自分の受けておいでになった有り余る満足と、我儘とに、思いおよぼしたことはございませんようです。天性、花のように生み成された御容貌が、無残にそこなわれてしまった怨《うら》みを、骨髄に徹するほど無念にくり返し、くり返し、私はあなたのお口から聞かされました。しかし、私に言わせますと、あなたの御容貌を微塵《みじん》に打砕いたそのものは、あなたの継《まま》のお母さんではありません、また、そのお母さんに味方をするという一類の人たちではありません、あなたの心の増長が、その面《かお》を焼きました」
おしゃべり坊主は土に坐って、一気にこれだけをしゃべりました。
三十二
「何とでもおっしゃい」
お銀様も、土の上に腰をおろして、相変らず冷然として、おしゃべり坊主
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