から、いささか折檻《せっかん》してやったのだ。お前の顔に免じて、このくらいで許してやるまいでもないが、いったい、何の恨みで、われわれに喧嘩を売りに来たのだか、亭主、そこでお前からよく問いただしてみてくれ。そうして、本人がなるほど悪いと気がついたら、あやまるがよかろう」
仏頂寺からこう言われるまでもなく、仲裁に出る時に、もう亭主はそれを気がついていたので、この奴等が、たのまれておどしに来た当人は、もうすでに立ってしまったのだ。
ここへ、あの芸者がころがり込んで、一夜を明かして、泣き出しそうな顔で立去ったことを、亭主は、知って知らない顔をしていたのだ。
昨夜、あれほど探したのに出て来ないで、今朝になって早く飛び出したのは、どういうわけだか、これは亭主は知らないが、とにかく、この座敷へ昨晩泊ったことは確かである。
さあ、この後日に間違いがなければいいがと、ヒヤヒヤしているうちに、この座敷の主人、すなわち兵馬は無事に出立してしまったから、まあよかった、どう間違っても、当人さえ出て行けば、相手のない喧嘩はできないのだから、まあ何とか納まるだろうと、ホッと息をついているところへ、仏頂寺らが帰ったものだから、また新たな心配が起らないでもありません。
それに心を残して髪結《かみゆい》に行っている間に、この騒ぎが持上って、人が迎えに来たものだから急いで駈けつけて見ると、果して、こんなことになってしまっている。
まあ、まあ、といって、その膝ッ小僧連をつれ出して、委細を言って聞かせ、お前たちが喧嘩を売りに来た当の相手は、モット若い人で、それはもう立去ってしまい、今いるのは、昨日はよそへ泊り、今朝あの座敷へ戻ったばかりの別の人である。お前たち、何というそそっかしいことだ。喧嘩を売る前に一度、わたしに相談をかけたらいいじゃないか。飛んでもない相手に喧嘩を売りかけたものだ――といってたしなめると、膝ッ小僧連も一同ハニかんでしまい、では出直して来るといって、そこそこに立去る。
そのあとで、亭主は改めて仏頂寺らの前へ出て、その勘違いの失礼の段々を、ことをわけて話しておわびをすると、仏頂寺、丸山は、興多くその物語を聞いていたが、
「おやおや、それは意外に色気のある話だ、まさか兵馬が、芸者をこれへ引張り込んで、一晩泊めたとも思われないが、芸者がまた、何と思って兵馬のところへ戸惑いをして来
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