で、それを尋ねもしないうちに、宿の男衆が告げてくれたのは、この人たちにも、かねて疑問となっていたからです。
「ありゃ、飛騨の高山の名代《なだい》の穀屋《こくや》の後家さんですよ、男妾《おとこめかけ》を連れて来ているんですよ、男妾をね」
と言ったものですから、お雪がそうかと思いました。
 ある時、廊下で顔を見合わせた若いのがそれでしょう。色が青ざめてやせていましたが、かなりのやさ[#「やさ」に傍点]男と思いました。
 後家さんは、それを男妾だとはいいません、伴《とも》につれて来た男衆だといっていますけれど、到着早々、誰もそれを信ずるものがなくなってしまったので、若い男は少しばかりきまり[#「きまり」に傍点]を悪がっているが、婆さんはしゃあしゃあとしたもので、どうかすると、泊り客にも思いきったところを見せつけたりなどするものですから、この夏中、評判の中心となっていました。
「あんな婆さんに可愛がられては、男妾もやりきれまい」
 岡焼半分に噂は絶えなかったが、後家さんは闊達《かったつ》なもので、愛嬌で泊り客をなめまわし、身銭《みぜに》をきっておごってみたり、踊りの時などは、先へ立って世話を焼
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